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2012年12月

22日

Dream Journal 4

女。白と黒の花の様な曲線模様のワンピース。赤い爪。赤い靴。髪の毛は輪郭に沿って前に下がって垂れていて、顔が少し隠れている女。女は、カウンターの下の三つの蛇口の一番右から、黒い水差しに水を汲んで前のカウンターに置いた。間。女は、黒い水差しの隣のアイスペールから氷をひとつトングで掴みあげてグラスに入れようとして入らず、氷の角度を三回変えて氷をグラスに入れた。女は、黒い水差しを持ち上げて、氷の入ったグラスに水を注いだ。女は、アイスペールからマドラーを掴みあげて、水と氷の入ったグラスに差して一周混ぜた。女は、マドラーをアイスペールに戻してカウンターに手を置いた。間。女は、グラスの水を一気に飲み干して、黒い水差しを持ち上げて水をグラスに注いで、マドラーで一混ぜしてアイスペールに戻して、カウンターに手を置いた。間。女は、カウンターの下の冷蔵庫から緑茶のパックを出してキャップを回し開け、後ろの棚からデキャンタグラスを取り出し、デキャンタグラスの半分まで緑茶を注いで、水のグラスの隣に置いて、緑茶のパックを冷蔵庫に戻した。女は、カウンターに手を置いた。間。女は、グラスの水を一口だけ飲んだ。女は、デキャンタグラスの緑茶を水のグラスに注ぎ足して、マドラーで一混ぜした。女は、グラスの緑茶入りの水を一気に飲み干した。女は、カウンターに手を置いた。間。女は、アイスペールから氷をひとつトングで掴みあげて、少し小さくなった氷がひとつ入っているグラスに氷を入れた。ふたつ目の氷は、少しグラスからはみ出した。女は、黒い水差しを取って、はみ出した氷の隙間から水を注いで、マドラーで三周混ぜた。はみ出した氷は沈んだ。女は、デキャンタグラスの緑茶を
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2012年12月

17日

Dream Journal 3

乗り物という乗り物が全て動かず仕方がないので歩いて帰った。随分歩いた。順調に歩いた。足早に歩いた。退屈に歩いた。何日も歩いたと思う。あとは、この山を越えれば、家につく、というところ。ずっと隣を歩いている長いさらさらの髪の女が誰かはわからず、ここまで一言も口を利いていないし目も合わせていないが、女も私と同じところに帰ろうとしていたのと、私も女も、あともう少し、と知っていた。

最後のアスファルトの坂道を上っている。前方、坂の頂上のもっと向こう、向かっている先の向こうの山の頂上から、一瞬、火のようなものがあがったのを見た。「あれ!」と、私は言って、ほとんどはじめて立ち止まって山を指差すと、隣の女は「火だ!!!」と、やっぱりほとんどはじめて立ち止まって、同じ前方にある別の山を指差した。女の声をはじめて聞いた。女の顔をはじめて見た。くっきりして大きな目鼻口に、さらにばっちり濃い化粧をしていて、その上に一層目を丸くして、鼻の穴を広げ、頬を赤らめていた。幼稚園にサンタクロースが入ってきた時の、じゅんちゃんの顔を思い出す。じゅんちゃんは男で、目も鼻も口も小さかったけど、その時じゅんちゃんは、今の女と同じ顔をした。手を叩いて飛び跳ね叫んでサンタクロースにしがみつき、サンタクロースのひげがはがれて、サンタクロースがサンタクロースでなくてチバ先生だった時、じゅんちゃんはうつ伏せになって顔を床につけ、両腕をまっすぐ上にのばしたまま何時間も泣いた。

女の指す山は真っ赤に燃えていて、ここからもはっきりと見えて時々炎があがり、火ははみるみるうちに広がっていて、すぐにも私が指した方の山にも移るだろう。と、思ったとき、坂の上の向こうから、次々と人々が走り出てくる。人々は急いでいて、あまりに急いでいて、中には転がりくだる人もいた。誰も声をあげていない。誰も連れ添っていない。誰も後ろを見ない。誰も私や女を見ない。次々と、パラパラと、一人ずつ、たくさんの人々が、前のめりに、私と女が今登ってきた坂道をくだった。坂の上の方に、炎に包まれて燃えあがる人が出てきたのを見て、女と私は「わ」と同時に言った。燃えた人は、くるくると回ってうずくまって、坂の向こうに消えた。

人々はどんどん増えた。私と女だけが、人々が急ぐ先と反対の方を向いている。あともう少し、だったのだ。走りくだる一人の男が近くまで来た。男の背負っているリュックの肩かけの部分が燃えていた。「火!!火!!!」と、男に言うと、男は一瞬キョロキョロと周りを見回し、右肩の火に気がついて慌ててリュックを下ろすと、足で踏んで消火した。その間にもたくさんの人が、男を飛び越えてくだっていった。男はリュックの火を消すと、こちらを見て肩をすくめて少し笑い、またリュックを背負って走りくだっていった。山からまた炎があがった。女が皆と同じ方向へ、ゆっくり後ろ向きのままくだりはじめる。どうやら引き返すしかなさそうだ。

走った。走った。走った。火の山を背にして、もと来た方へ走った。人々と同じようにして走った。女も隣で走った。後ろを振り返ると、火の山がゆっくり崩れはじめ、こちら側に流れてくるのが見えた。ますますたくさんの人々は、ますます走った。坂をくだりきり、道はなくなり、いつのまにか森の中を、そして人々はバラバラの方向に走った。どの方向が向かうべき方か、逃げ切れる方か、わからなかった。私と女は、ただただ近くの人々の流れにのって走った。別の方向に反れていった先を行く人々が、追いついた土砂にのまれるのを見た。

「のぼれ!!」と誰かが言うのが聞こえて、私と女は、目の前に現れた古い塔の階段を登った。近くの人々が続いてきた。てっぺんまで登ると、人々の重みで塔がゆれた。塔の横の大きな岩が動く。よく見ると岩ではなく、大きな大きな象の頭頂部だ。4、5頭の象が、塔の横の木々の間でぴったり寄り添っていた。「動物園から?」と女が言った。「わからない」と、私は声に出さずに言って、塔から象の背中に飛び移った。象たちは木に挟まって、お互いの体もくっついて、動けなくなっていた。下には象の足の間を逃げ走る人々がゆくのが見える。飛び乗った先頭の象の背中は湿っていて、目からは涙が流れていた。私は象の背中から、再び塔のてっぺんに飛び戻った。山が、どろどろの土砂が迫り、ゆっくりと塔が倒れはじめた。

倒れる。倒れる。倒れる。人々は塔のてっぺんにしがみついた。塔の倒れゆく先に、別の高い建物が見える。少し離れているが、隣で女が息をのんで、そこに飛び移ろうとしているのがわかった。女が飛んだ瞬間に一緒に飛ぼうと私も女と息を合わせた。落ちるかもしれない。飛ばなかろうと落ちる。今か。今か。今か。倒れている途中にも、しかしどうやら塔は高くのびているようだった。だんだん速くなるのは、倒れているスピードか、のびているスピードか、わからなくなった。見当をつけたようには建物に近づかない。女も私も飛び移る機を逃した。塔の先は空にのびながら地面に近づいていく。土砂を過ぎた。森を過ぎた。畑を過ぎた。私は目を瞑った。

気がつくと、私はまた走っていた。女も走っていた。走って、走って、何日か前に通り過ぎた、見知った街の広場に出た。ここでは人々は騒がしく声を上げ、辺りをうろうろしたり、寄り集まってしゃがみこんだり、泣いたり叫んだりしている。私と女は走り止まなかった。「吸い込むな!!」と誰かが言うのが聞こえて、マスクをしたり、口を押さえている人々とすれ違った。「マスクだよ」私は女に言った。同じものを見ている女は返事をしなかった。たどり着いた人々が群がるコンビニには、入り口自体にに巨大なマスクが着けてられている。「ぜんぶ封鎖」女が私に言った。見渡す限りの店という店が、マスクを着けていた。

また目の前を、走る人々の群れが横切る。人々の走り来る路地の先を見ると、大量の水が建物の隙間を流れきていた。火でない、土砂でない、今度は水だ。テレビかネットで見た、と思った。私はまた流れにのって、人々の逃げる先に走った。女は私の前にいた。女は人々から反れて、左の路地を入った。私は女についていった。女は、もう一度、今度は右の路地へと曲がった。私は女についていった。女は、曲がってすぐの建物のガラスの引き戸を引いて中に滑り込み、私の腕をつかんで勢いよく私を中に引き入れると、ぴしゃりと戸を閉めた。「ここなら大丈夫」女は言った。小さくて古いマッサージ店だった。中に入ったことはないが、この店の前を歩いて通ったので知っていた。「水が過ぎるまで」女は言った。

店の中には、白衣を着たおじいさんが立っていた。「ひどいなあ」と、おじいさんは、ガラス戸の向こうの外を見ながら言った。外は薄暗くなっていて、私には様子はよく見えない。奥のカウンターの向こうから、白衣を着たおばあさんが出てきた。「あら、こんにちは」おばあさんは、ゆっくり深く頭を下げてから、ゆっくりカウンター近くの椅子に座り「大丈夫かしら?」と、私の方を向いて言った。「大丈夫です」私は早口に言いながら、おばあさんの方に向き直ろうとして、ちょうど私の後ろにあった膝の高さくらいの固い簡易ベッドのようなものに躓き、そのままよろけてベッドに尻餅をついた。慌てて立ち上がろうとして手をベッドにつくと、今度はそのまま肘が折れてベッドに横になった。頭の下には、固くて小さな枕があった。「ご、ごめんなさい」私は起き上がろうとした。起き上がれない。起き上がろうとした。起き上がれない。腕も足も動かないのだ。「ごめんなさい」私は横になったままもう一度言った。女が私の顔を見て、頷いた。急に眠気が襲ってきた。

「せっかくだし、マッサージを受けていかれてはどうですか?」おばあさんは、起き上がれない私に言った。「いえ、あの、結構です」と言おうとすると、今度は口が動かない。「ああ、いいよ」かわりに、おじいさんが外を見たまま言った。ガラス戸の外に、白衣の若い男が現れる。男はガラス戸を鏡代わりにして長い髪を後ろに束ね、白衣を整えると、店の中に入ってきた。どこかで見たことがある、と思ったら、女と歩きはじめる前の晩に寄ったライブハウスで、今と同じように髪を後ろに束ね、黒い皮ジャケットを着てベースを弾いていた男だった。ライブが終わると各テーブルを回りはじめ、近くに寄ってきては、私のタバコケースに名刺を入れて黙って去っていった男だった。名前は思い出せない。肩書きのところには『代表』と書かれていた。横たわっている私を見て、白衣を着たベースの『代表』は「メール待ってたのに」と、言った。

白衣を着た若い男たちが、他にも次々に入ってきて、数えられないほど入ってきて、私を囲む。私は身動きができない。おじいさんは、黙って外を見たままだ。女は見えない。男の一人が、私のズボンを膝までまくり上げた。別の男が「では、はじめます」と言った。別の男が、右足首を押さえた。別の男が、左足首を押さえた。別の男が、私のスネを一撫でした。男たちが一斉に、私の顔を見た。別の男が「どうですか!?」と聞いた。私は口も利けず、触られている感覚も全くなく、辛うじて少しだけ首を傾げる。男が代わる代わるに、私のスネを撫でた。代わる代わるに私の足の指を動かしている者もいた。足の指の男が「あっ!!」と声を上げた。男たちが一斉に、私の顔を見た。別の男が「いいですか!?」と聞いた。私は辛うじて少しだけ目を動かす。「今のはすごい!」「これはきたね!」次第に男たちは騒がしくなり、私は感覚のない足を触られたまま、いつのまにか眠っていた。

目を開けると、白衣の男たちはまだそこにいて、私から少し離れて立っていた。私はベッドから体を起こした。手も足も動いた。「そろそろだよ」と、外を見ているおじいさんの隣で女が言った。私はまくられたままのズボンをおろし、靴下を履こうとする。なんだ。右の足の中指が、長くのびて奇妙に曲がって、ぶらぶらになっていた。「これなんですか?」私は自分の足をあげて近くの男に聞いた。とくに足を確認することなく「痛いですか?」と男は言った。痛くはなかった。「では戻してみてください」男は言った。戻す?どうやって?私は全足指を動かしてみたり手で触ってみたりする。やっぱり中指だけが思うように動かずにぶらぶらしている。「できません」私は言った。男は「ま、いいでしょう」と言って、そのまま私に靴下をはかせた。「いいんですか」痛くもなかったし、普通に歩けもしたので、私はそのまま外に出た。

水だ。私と女はまた走っていた。今度は逃げ場がなく、水はもうすぐそこまで来ている。水に乗って流れてくる建物があった。近くの人々はその建物の中に流れ込んでいった。「そこに入ったらおわり!!!」女の叫ぶ顔を見ながら、私の体の半分以上はもう建物の中に入っていて、そのまま水と人々に押し流され、建物の中に入った。ドアがしまった。女とはぐれた。ここに入ったらおわり。慌てて出ようとするが、外は水かさが増していてドアはもうびくともしない。ここに入ったらおわり。建物は、地区会館のような一部屋の広間の平屋で、斜めに傾いていた。中の人々は、みんな落ち着いていて静かに、誰も動かなかった。ここに入ったらおわり。外の水かさは増していて、建物はどんどん沈んでいく。私はまだ水の届いていない窓に走った。思い切り叩く。割れない。水が迫ってくる。叩く。割れない。水に埋まる前に。叩く。割れない。黄色いジャンパーの中年男が近づいてきて、その窓を叩いた。ヒビが入った。今だ。私は思いっきりそのヒビに頭突きし、上半身をねじ込んだ。建物の中に、割れた箇所から水が入り込む。黄色い男は下から支えてくれた。出た。私の上半身は外に出た。一面が、黄土色の静かな水だった。誰もいない。女も見当たらない。これはすごい。私は写真を撮ろうとする。右ポケットに入っていたiPhoneは、ちっとも動かなかった。

荒野を歩く。女も歩く。熱い。日差しがきつく、からからだった。ゆっくり歩く。遠くに見慣れたボロボロのアパートが見える。歩く。近づく。帰ろうとしていた家ではないか。近づく。いつもと少し様子が違う。歩く。近づく。たくさんの絵が、アパートの玄関、壁、ベランダ、前の広場に、びっしりと並べられていて、それは隣の部屋の前まで浸食していた。近づく。歩く。近づく。歩く。見たことのある絵だった。近づく。これは全部、私の絵だ。歩く。近づく。「59」という黒い大きな見慣れたフォントのロゴが書かれた看板が見えた。歩く。近づく。絵と一緒には、ろうそくとお香のようなものがたくさん焚かれている。赤。青。緑。黄。茶。白。オレンジ。私は立ち止まって、少し遠くからそれらを眺めた。女も同じく立ち止まった。玄関の横の椅子に、黒い服を着て帽子をかぶった男が一人座っているのが見える。顔をあげた。父だ。父は立ち上がって、こちらの方を見た。私は立ち止まったまま、両手をまっすぐにあげて「よー!」と声をあげた。間があって突然、父の顔はくしゃくしゃになり、それから声をあげて泣きはじめた。私はそのまま前に倒れた。どれくらいそうしていただろうか。私の隣で女は「じゅんちゃんみたいね」と言った。

部屋に入ると母がいる。母は台所に立っていて、いつもの調子で「あら、おかえり」と言った。「お腹すいてなあい?」と言った。弟は携帯をいじりながら、ゲームかなにかをしていて、こちらを見向きもしない。私はそれよりも、外が一体どうなったのか知りたくて、テレビをつけた。どのチャンネルでも、バラエティー番組しかやっていない。「久しぶりにね、Skypeで話したのよ、おっきくなってるわー」母は言った。外国にいる妹に産まれた子どもの話だった。

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