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2012年01月

03日

Force Majeure

もう数時間も、母は無言でピアノを弾き続けてエンドレス。その後ろで、やっぱり無言でギターを合わせようとし続けている父は、ときどき私を呼びつけて、後ろ髪を触るのをやめろ、と言う。言われる度に、あ、と言ってやめるが、次に私の手が私の頭の後ろにある時はまったく無意識なので、何度も何度も繰り返し言われる。どれ、それがどれだけかっこ悪いか、不愉快か、お父さんがやってやろう。と言って、しつこくしつこく、彼は自分の後ろ頭を触りはじめた。トイレに行っては触り、水を飲んでは触り、煙草を吸っては触り、ギターを抱えては触り、とことんやった後、憎々しそうに、どうだ、と聞くから、いいと思う、と答える。母は、ここに人がいないように弾いている。父は、じゃあ今晩もいい音を聞かせてもらってありがとうございます、と言って消えたので、たぶん寝たのだろう。そこからさらに音は続いて数時間が経った。

突然難しい顔をして携帯を睨むので、見えないのか、と聞いたら、長野で遭難者四人、と、たどたどしく読み上げた。救助のヘリも強風で引き返した。それニュース?今日?死んだな。え?低体温症だ。

昨日までも山に入っていたその父に、遭難することはないのかどうか聞いたら、なにを聞くのかと言わんばかりに、ない、と言う。沢をたどればいつか海だろう。北海道なんかでは、ない。大陸なら別だ。車が落ちたりしたじゃない?車?ああ。あれは、いくら真っすぐ道を走ってようが、雪がずり落ちて崖から落ちたのだから、不可抗力だ。父は、まるで不可抗力ならなんだって問題ないみたいにして、不可抗力、という言葉をよく使うのだ。一緒に行ってみないか、ともよく言われるが、雪山で車を落としたって、たった1人であがってくるような人には、とてもついて行きたくない。殺されるよ。あるいは、殺してしまいます。

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