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2012年01月

18日

San Antonio 1

とにかく早くワタシは眠りにつきたかった。もうほとんど2晩も寝ていなかったから。いっそのこと、草わらに隠れて寝てしまおう。あの木の麓がいいか。茂った草木を踏みつぶして大きな木の麓に近づき、背負っていた荷物を下ろすと、その上に座ってペットボトルの水を飲み、それから煙草に火をつけ大きく吸った。

ふう。と、煙を吐く間もなく突然に、いたっ。いたたたたた。あちっ。で、え、かゆ!!勢いよく立ち上がって、足踏みをする。素足は指先からお尻のすぐそばまで、かゆっ、いし、いたっ、赤っ、くて、なっ、いたっ!なんだこれは。姿は見えない。

いたっ!足を叩いてみた。いたたたた。煙草の煙を近づける。あちちちち。暴れ回っても、目を瞑って息を止めて静止しても、どうにも次々に体中が痛くて痒く、足はみるみる腫れていく。たまらん。ワタシは煙草とカードをお尻のポケットに入れ、荷物を全部置いたまま、木の麓を離れた。

まっすぐな道が一本ある。一方の先は、とめどなく緑で濃い緑で、もう一方の先は、下っていて見えない。ワタシはしばらく立ち止まって、サンダルにはさまった小石を取ってから、見えない方へ進んでいくことにした。足がかゆい。そして眠い。もう歩くのもうんざりだ。全身を大きく横に揺らしながら、ゆっくり進んでいった。冷たいシャワーを浴びて、体を水平にして眠ることを想像して、もう少しもう少し、と呟いた。もう少しもう少しもう少しもう少し。少なくとも一週間は、そうしていなかった。

もうすこ、し、もうすこ、し、たらんたん、たん、たらんたん、たん。右足ー。左足ー。右足ー。左足ー。もうすこ、し、あとすこ、し、たららん、らん、たららん、らん。みぎ。ひだり。みぎ。ひだり。たらんたん、たん、たららーんららんら、らん、たらら、たらら、ららー。ひだり。たらんたん、たん、たららーんららんら、らん、さらばケンタッキー、のー、いえー。ひだり。右。左。

昨日まで隣の席に座っていたほっぺたの赤いそばかすのローラは、ケンタッキー州の農家の娘で、農場の生活がどんなに大好きか、だって朝の光がどんなにキラキラか、おばあさんの焼くマフィンがどんなにおいしいか、フィアンセの家族がどんなに親切にしてくれるか、など、早口でワタシに語ったあと、突然顔を曇らせて、でも時々息がつまるわ、と言った。黙って聞いていたワタシは、大急ぎで、わかるわ、と言った。ローラはもう一度、でも時々ね、と言って笑った。そこでローラは黙ってしまい、ワタシは、また大急ぎで、ほっぺたがすごく素敵、と言った。ローラは驚いて、でもこの田舎臭いほっぺたが一番嫌いなの、と言った。

おーいー、だーれかー。辺りは少しずつ明るくなって、鳴り出した鳥や虫の声はどんどん大きくなっていた。あれー、は、なんだー。と、張り上げた自分の声が聞こえなかったので、ワタシはもう声を出すのをやめた。道の先の正面に、白い建物が見えた。ワタシは両足の先から付け根までをひとしきり掻きむしってから、その建物に向かって早足で進んでいった。

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