--年--月

--日

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2012年01月

20日

San Antonio 2

白い建物に見えたのは、白い壁のようだった。木々に囲まれた一本道は、壁の随分手前で切れてなくなった。周りの木々もそこで途切れた。空が突然高くなる。日差しがきつくなって、ワタシと白い壁の間が揺れた。でこぼこの黄土色の地面の上を、白い壁に進んで近づくと、壁はワタシの背丈の二倍以上はあった。壁は右にも左にもずっと続いていて、先が見えず、所々には、黒い傷のようなものがついていた。壁の向こうには、なんの気配もない。何の音もしない。ワタシの息がした。

ワタシはもっと近づいて、壁にもたれて座り込んだ。ひんやりとして気持ちがいい。足をボリボリ掻いた。掻いても掻いても掻いた。足は赤く斑点模様になっていた。ここなら眠れるだろうか。ここなら眠れるだろう。ここなら眠れるだろうが、ここなら眠る間に干上がるだろうが、少しだけなら大丈夫だろう。水を忘れた。荷物のところだ。ワタシは煙草に火をつけた。

ものすごい勢いで右奥から、でこぼこの地面を車がやってきて、ものすごい勢いでワタシの前を通り過ぎる、かと思ったら、ものすごい勢いで急停止した。運転席の窓が開くと同時に、ワタシに向かって男が叫ぶ。
「おいよ!きちがいか?!」
ワタシは咄嗟に立ち上がって煙草をほんのり後ろに隠し
「ごめんなさい」
と言ったら立ちくらんでよろけた。
「死にたいの?!」
男はサングラスを外して言う。若い白人の男だった。
「いいえ」
ワタシは首を横に振り、持っていた煙草を落として両手をあげた。
「。。。」
車から、スペイン語の陽気な歌が聞こえる。
「。。。」
ワタシは両手をあげたまま。
「。。。早く乗りなよ」
男は笑いながら身を乗り出して、車の後ろを親指で指した。
「。。。あの、大丈夫、すいません、帰ります」
ワタシはゆっくりと両手を下ろして言った。
「ほんとに?帰れるの?」
「いえす」
「ほんとに?乗らなくていいの?」
「大丈夫です」
男は、前方に向き直って、またワタシの方を見て、
「この時期に外を歩く人なんて、みんなきちがいだから、わかる?」
と言った。
「わかりました」
ワタシは言った。
「脅かさないでくれ」
と言って、男はまたものすごい勢いで、車を発進させて行ってしまった。

戻ろう。荷物のところに。ワタシはもと来た一本道の端っこを目指した。もう眠くもなかったし、足も痒くなかった。早く四方の壁に囲まれたい、と思った。車の方を見た。行ってしまった車がバックして近づいてくるように見える。

行ってしまった車がバックして近づいてきていた。逃げようと駆け出す間もなく、ものすごい勢いで近づいていた。車が止まった。男が降りて来た。ワタシは駆け出した。男はワタシに何かを叫んだ。ワタシは止まって男の方を見た。男は地面に何かを置いた。男はワタシに何かを叫んだ。男は何かを置いたまま、また車に乗って、行ってしまった。車が小さくなって、右に折れて消えるまで、ワタシは止まっていた。

それから何かに近づいた。男が地面に置いたのは、ペットボトルの水だった。口の空いていない、ワタシが荷物のところに置いてきたのと同じメーカーの、ペットボトルの水だった。

デメロン、デメロン、デメロン、メロンメロンメロンメロンメロン、ポラソン。

ワタシは一口飲んでから、その水を持って荷物のところへ戻っていった。

CONTACT

TWEETS

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。