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2012年01月

22日

San Antonio 5

ワタシは、誰もいないプールサイドに座り、水に足をつけて、ちゃぽちゃぽと掻いている。さっきランドリーには、ずっと着ていた服や下着を入れて来た。プールから見えるキッチンでは、中年の男女が2人で食事をしている。話しているのは英語でもスペイン語でもなかった。

水が生温い。そうか夏には水は生温いのだ。汗をかいていた。そうだ夏には汗をかくではないか。飛んで来た虫が、プールに飛び込んでもがいた。ああ、夏には虫も生きるのだった。そのどれもが、ワタシの住む砂漠の暑い夏にはなかった。あの人、外を歩くなんてきちがいだって言ったけど。白い壁のところで会った車の男を思い出す。ここには虫も生きてるじゃないか。

そのおばさんは、ワタシの隣に座っていた男がトイレに立つと、バンバンバンとワタシの肩を叩いて言ったのだ。ちょっと!!あなた何でもかんでも答え過ぎよ。優しすぎる。大丈夫?あの男、怪しいわ。そして、怪しいわ。ものすごく、怪しいわ。話が大袈裟。わかる?いい人と悪い人がいるの。あなた、女は見極めなきゃだめ。本を持っている?持っていなかったら貸すわ。持っていたら読んで。本に集中しているふりをなさい。そして無視するのよ。いいわね、がんばって!!

ワタシはポカンとしてから、口をつぐんだ。確かにワタシは浮かれていた。その男との話がとても楽しかったから。確かにその前までの列車では、いいと思った人が2人きりになった途端に豹変し、かわすのに大変苦労したこともあった。ワタシは、それはわからなかった、と言って、ありがとう、と言って、そうします、と言って、男が戻って来ると、おばさんに見つめられながら、おばさんに言われた通りにした。話しかけられても、生返事をし、何を読んでるの?と聞かれても、答えなかった。男はワタシの豹変に首をかしげ、それからもう笑わずに、それからずっと窓の外を見ていた。ワタシはなんだか居心地が悪い、と思いながら、チラリとおばさんの方を見やると、それでいいのよ、というように、おばさんは深く2回頷いた。

男は降りる駅に着くと、ありがとう、気をつけて、とワタシに言った。ホームに男を見つけると、男は再会したおじいさんと抱き合って泣いていた。20年振りに会う、唯一の肉親の話を、楽しみに楽しみに楽しみにしている再会の話を、男はワタシにしていたのだった。おばさんが、正しいか正しくないかは、でもわからなかった。ただ次にそういう場面がきた時、ワタシはなんて言うかを考えて揺られていた。あり、がとう、気をつけ、ます。でも、見極め、は、自分、で、します。痛い目、には、ワタシ、が、あいます。

プールサイドに数人が入って来る。小太りの小さな、頭の黒毛の薄い、チョビ髭の濃いおじさんが、奇声をあげて、宙返りをしながらプールに飛び込んだ。ワタシの全身に水がかかる。ちょっと!!!ワタシはあわてて、足を水からあげて、数歩離れた。

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